カタメ 3 | サムライTRADER ゲッツ

カタメ 3

幹夫が下校時に後をつけるようになって3ヶ月が過ぎた

もちろんまだ誰にも気づかれていない

そんな8月のある日

この日も幹夫は後をつけていた

さっきまでの天気が嘘のように

夕立が激しくなる

雨で10メートル先が見えないほどに

香織はずぶぬれになっている

幹夫もそうだ

いつもより見えにくい

いや、形がぼーっと見えるだけで

香織かどうかさえわからない

もしかしたら違う人かもしれない

近づくとばれてしまうから

ある程度離れていないといけないので

幹夫は今日は帰ろうと思った

見えないし

自分もずぶぬれだし

香織が信号で止まっている

その姿を見て

幹夫は自転車を反転させる

自分の家に向かい走り出した瞬間

物凄いブレーキの音と

衝突音が聞こえた

幹夫は振り向き

かけつける

香織じゃないだろうな

まさかぶつかったのは香織じゃないだろうな

なんとも言えぬ心を覆う嫌な気分

吐き出しそうになるくらい

嫌な感じをおぼえた

そばにいくと

香織がはねられて倒れている

激しい雨と

香織の血が

混ざり合い

幹夫は足が震えた

周りには誰もいない

跳ねた車もいない

逃げたのか

幹夫は抱きかかえた

あまりにも雨が激しくて

よく見えなかった香織の顔が見える

幹夫は大声で叫び声とも嗚咽とも呼べないような

声とさえ呼べないような

思いを吐き出した

香織の片目がないのだ

顔には少しの傷しかないのに

目の玉だけない

ちょうどすっぽりなくなってる

幹夫は周りを探した

そして転がっている香織の目の玉を見つけた

少しどろっとしている

その目の玉をポケットに入れ

幹夫は気を失っている香織を乗せ

自転車をこぎだした

自分の家に向かって

幹夫の家は病院だった

街で一番の病院だった

幹夫は急いだ

香織の目の玉を持って

幹夫は急いだ